FT-8送受信データ解析

アマチュア無線で広く使用されるデジタル通信モードFT-8は、自動化された通信プロトコルを使用しており、原則、通信したい相手局を指定すれば、オペレーターが手動で送信する必要がなく、WSJT-Xなどのソフトウェアによって自動的にCQコール(誰か応答してくださいの意味の送信)や応答が行われる。
ここでは、WSJT-Xが記録した送受信データを、ChatGPT 4oのGPTの知識としてアップロードし、どのような分析ができるかを調べた。

右上がXSJT-Xのメイン画面(各局の送受信データが表示されている)

FT-8の交信は、たとえば、下記の手順で行われ、全ての手順の送受信が正常に行われた場合、交信が成功したと判断される。また、別のソフトウェアを導入することで、成功した交信を自動的にログ(無線業務日誌)に記録することができる。

手順1:CQ  A局コールサイン  PM95     :A局がCQコールを送信、「PM95」はA局所在地域を表す文字列
手順2:A局コールサイン  B局コールサイン  -2 :B局がA局をコール、「-2」は信号レポート(受信電波の強度)
手順3:B局コールサイン  A局コールサイン  R-5   :A局がB局に「R」(了解)と信号レポート「-5」を送る
手順4:A局コールサイン  B局コールサイン  RR73 :B局がA局に「RR」(了解)と「73」(さよならの意)を送る
手順5:B局コールサイン  A局コールサイン  73   :A局がB局に「73」を送る

成功した交信の情報は、送受信データとは別にログに記録されるので、交信が失敗した場合の分析を行うことにした。
XSJT-Xの場合、上記各手順の送受信データは「all.txt」というファイルに保存され、下記の情報を含んでいた。

  • 送受信信号の日時
    ※UTCは、世界の標準時として使用される協定世界時であり、日本の標準時(JST)はUTC+9時間である。
  • 送受信区分(Rxは受信、Txは送信)
  • モード(FT-8)
  • 信号レポートdB
  • ディレイタイムDT(基準時間からの遅れ時間)
  • 周波数
  • メッセージ(「CQ A局コールサイン PM95」など)

「all.txt」のデータをEXCELに読み込ませれば、たとえば、交信に失敗した局も含めて、自局が関係した局を抽出することができるが、送受信データだけでは、交信に成功した局なのか、失敗した局なのかを確認するのは面倒である。
それは、特定の局とのやりとりがどの段階まで行われたかを確認する必要があるからである。

交信に失敗した場合、どの段階まで進んだかを確認することによって、交信できる可能性が高い局か、根本的な対策が必要な局かを区別することができ、今後の交信に活かすことができる。

交信のパターンは、説明した手順のもの以外にも複数あり、たとえば、先に説明した一連の手順のうち、手順5がないパターンが用いられる場合もあるので、ここでは、CQコールを送信した局を、信号レポート付きで呼び出し、その局からの「了解」を示す情報を受信できた時点で、交信が成功したものとする。

FT-8送受信データを解析するGPTの構築

長期間の送受信データのファイルサイズが大きく、GPTにアップロードすることができなかったので、2022年の特定の期間のデータをアップロードした。また、交信手順の例を複数記載したファイルもアップロードし、GPTに下記の指示を与えて質問を行った。

(「指示」欄に記載した内容)

知識としてアップロードされた送受信データを解析し質問に日本語で回答してください。
その際、下記のルールに従い、交信の成否を判断してください。

ルール
下記のいずれかを満たした時点で、交信成功とし、その後の送受信データは無視してください。

「R」を含むレポートを受信。
「RRR」を受信。
「RR73」を受信。

(自局コールサインは非表示とする)

[自局コールサイン]が交信に失敗している例を回答してください。
その際、どの段階まで進んだかも教えてください

以下は、[自局コールサイン]が交信に失敗した例と、それぞれがどの段階まで進んだかです。

1. JK1EBA – [自局コールサイン]
メッセージ: JK1EBA [自局コールサイン] PM74
進行状況: 信号レポートの交換までは進みましたが、「R」や「RRR」を受信していないため、交信が完了していません。
2. JA7EUX – [自局コールサイン]
メッセージ: JA7EUX [自局コールサイン] -06
進行状況: 信号レポートを送信しましたが、「RRR」や「RR73」を受信しておらず、交信は成立していません。
3. JA7EUX – [自局コールサイン](複数回の試行) ←2.と同じ局
メッセージ: JA7EUX [自局コールサイン] -06(複数回試行)
進行状況: 複数回の信号レポート送信が行われましたが、確認信号を受信できず、交信が成立していません。

・1.は信号レポートの交換の段階まで進んだが、その途中で、または、「了解」の信号の送受信の段階で失敗している例であり、2.(3.も同じ局)は、信号レポート付きで何度も呼んだが、応答がなかった例である。
・相手局から応答がなかった場合、信号レポートを所定回数再送するように構成されており、ChatGPT 4oがそれを検知している

AIがやることなので、漏れのない回答は期待していない。「指示」の内容も改良が必要だと思われる。また、回答が全て正しいとは限らず、交信手順のパターンも複数あるので、回答された相手局と自局のコールサインの情報をもとに、送受信データを時系列でソートして確認する。

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